2006-10-02 Mon 14:32
9月10日(日) Vol.1 最終回の 1/2 観終わりました。第1回目からして、もはや最終回です。 コメディアンによる痛快サラリーマン映画、という期待感から、植木等の60年代に制作された「無責任男シリーズ」が連想されました。そんなキッカケで、同じ傾向にあると思われる、この「そろばんずく」という映画は 《1980年代の「無責任男シリーズ」だった》 のか? をテーマにして車内鑑賞を始めることにしてみました。結論から言うと、 “是”であり“否” でもあったのです。 では、説明しやすい“否”の理由から述べてみたいと思います。でも、その前に何故、「無責任男」と今作を比べようと思い立ったかを詳しく説明すると、「そろばんずく」という語感とタイトル画像からの印象がその理由となっているのです。「そろばんずく」とは、 “損得勘定に長けた” という意味で、卓越した営業センスで、そして主人公がコディアンであるため、口八丁、手八丁の調子の良さも手伝って、まるで「無責任男」のような爽快な出世モノが展開されるものと期待してしまったわけなのです。 「無責任男」と「そろばんずく」を決定的に分けるものを考察すると、 ①上昇志向の欠如 という2つの欠如が挙げられました。 ①“上昇志向”は、「無責任男シリーズ」が持つパワーの源 であり、無責任男はより良い環境を飽くなき探究心とチャレンジ精神で獲得していきますが、 ②実体性の欠如 「そろばんずく」において、会社組織が森田芳光監督流のあそび感覚を導入しての、学校組織にイメージを重複させた象徴的な表し方となってしまっているのですが、その為に、会社活動がリアリティに欠けた、バーチャルで実体を成さない社会活動との印象になっている点に代表されます。 今作は《1980年代の「無責任男」だった》のか? 9月16日(土) Vol.2 最終回の 2/2 前回、今作は《1980年代の「無責任男」》ではなかった。 とは言っても、この2つの映画にはやっぱり大きな乖離があります。 「60年代ー無責任男シリーズ」 は1962年の「ニッポン無責任時代」から始まる映画群で、ちょうど池田内閣のもとで所得倍増計画による“高度経済成長期”という国家的高揚感に溢れた時代に制作されています。一方の 「80年代ーそろばんずく」 は“バブル景気”が始まったとされる1986年12月から遡ること4ケ月前の8月に公開。まさにバブル前夜に制作された映画だったのです。 「60年代ー無責任男シリーズー高度経済成長」 は経済基盤の底上げを伴う、国民全体が“豊かさ”という一つの目標に向けて一致団結していた、次期総裁候補が標榜する“美しい国 日本”がそこにはあったわけです。当然、個人レベルに留まらない、国全体の“上昇志向”が美徳とされ、その成果としての1968年、GNP世界第2位の獲得という歴史的事実があるのです。 一方の 「80年代ーそろばんずくーバブル景気」 は異常な投機熱に狂った、マネーゲームの様相を呈し、地上げに代表される、従来のコミュニティを崩壊させることなど、気にも留めない極端な拝金主義があったのです。この超利己主義的なゼニゲバ行為を恥じて、「そろばんずく」では敢えて、主人公達のこれ見よがしな“上昇志向”を避け、“天神さま”という悪役に一身に集約させたのではないか、とさえ思えてしまったのでした。 ②実体性の欠如 は 「80年代ーそろばんずくーバブル景気」 が土地、マンション、高級車、果てはワインまでもを投機のネタとし、利便性や乗り心地、そして味というモノの本質や実体よりも、付加価値・資産価値という無形なものに群がった、実体の存在感が欠如した時代であると考えますが、 は“三種の神器”に代表される“消費は美徳”の、物の豊かさを高らかに謳歌した時代でした。 記憶によると「60年代ー無責任男シリーズー高度経済成長」の無責任男はメーカーや商社等の、モノを製造・販売する会社の社員であったのに対し、「80年代ーそろばんずくーバブル景気」の二人は、実体以上の高い価値を生み出す為に、ハイセンスなイメージを創出する現代の錬金術師である広告代理店の社員であることが、非常に象徴的な対比に思えました。 「60年代ー無責任男シリーズー高度経済成長」 はモノの実体に直接的に恩恵を受けた時代で、主人公も、モノの製造や流通に関与していた、実体性が確かな世界であったのです。方や、 「80年代ーそろばんずくーバブル景気」 はモノの実体よりも、内在している付加価値・資産価値を偏愛した時代で、主人公達も価値観を誇張するイメージ創出を商いとしている、実体性よりもイメージ偏重の時代であったのです。奇しくも、「バブル景気」を このように ②実体性の欠如 も「60年代ー高度経済成長」と「80年代ーバブル景気」という2つの社会の差異が大きく関与していると思われます。 まとめますと、 「60年代ー無責任男」の健康的な世界観を「80年代ーバブル景気」による ①上昇志向の欠如 を反動で叫びたくたくなるようなゼニケバ傾向、と という歪んだ力で捻じ伏せた結果、この「そろばんずく」といういびつな世界(否、映画)が生まれきたのだと結論づけることにします。 今作は 《1980年代の「無責任男」》 とは成り得なかったが、 スポンサーサイト
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2006-12-08 Fri 02:42 1-kakaku.com
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